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ベルリンのスタートアップの主な調達先や特徴

更新日:2019年12月4日

既に投資関連の方々やイノベーション担当者の間ではメジャーとなった欧州のスタートアップの首都ベルリン。

今回下記にリストアップしたものは、古いものも含めてこの都市の企業が如何に、”ドイツからかけ離れている”のかを多くの人に知ってもらう目的で纏めてみた。

市場調査をするときにまず、国>都市といった分析をする方法があるが昨今は国と都市はしばしば分離していて、更には都市より国際的なコミュニティネットワークで動いている。ベルリンはこの特徴が特に色濃い。ベルリンスタートアップの多くはドイツ企業ではない。中国や米国、日本と大きく異る点だ。


N26

欧州の3大モバイルバンクスタートアップの一つ(その他はロンドンのRevolut、Monzo)。オーストリア人のバレンティン・スタルフらがベルリンで設立。

世界的に顕著なフリーランサーや自由業の増加と、金融機関のそれらの対応の遅さに目を向けて成功したパターン。ある意味ドイツの金融機関の保守性とベルリンの先進性とのGAPがニーズを生み、同様の課題のあるUSや、モバイルバンクの巨人である中国テンセント(Wechat)を引きつけることになった。エストニアの有名送金スタートアップ、Transferwiseとも業務提携しEU外の国際送金サービスも充実させていく見込み。

2016年4月にValar Ventures(PaypalのCo-Founderで日本でも有名なシリコンバレー投資家のピーター・ティールが設立したVC)から€10milion (約13億円)シリーズAで調達。 2018年3月にシリーズCとしてテンセント(中国IT大手)とAllianz(独保険大手)から160MillionUSD(約180億円)調達。

現在85万人のカスタマーベースを2020年までに500万人まで拡張する予定 。2019年1月シリーズDとしてニューヨークのInsight Venture Partnersとシンガポールの投資ファンドGICより300Milion USD(約340億円)を調達し、市場評価は約2.7BillionUSD(約3000億円)を超え、ロンドンのRevolutを抜き欧州で最も市場価値の高いモバイルバンクとなった。(Softbank Vision Fund:Grunderszene 2019)


Sound Cloud

2007年8月にスウェーデン人サウンド・デザイナーのAlexander LjungとEric Wahlforssによってベルリンで設立。2009年4月にシリーズAを2.5M€をロンドンのPEファンドであるDoughty Hanson Technology Venturesより出資を受けた。2011年1月に10MUSDをニューヨークのUnion Square VenturesとSF/LondonのIndexVenturesから調達。

その後個人投資家としてハリウッド俳優のアストン・カッチャーとマドンナとU2のマネージャーでもあるGuy Osearyから受けている。2014年3月にTwitterより音楽アプリに関する共同提供の提案を受けたが音楽レーベルとのライセンスの兼ね合いで失敗している。また、2015年5月にTwitterが2Billion USD(約2300億円)での買収を試みている事が報道されたが実現にいたらず、2016年9月に音楽配信大手のSpotifyからの買収提案もあったものの実現していない。現在はSFオフィスとLondonオフィスを閉じ、ニューヨークとベルリンでオペレーションをしている。4000万人のユーザーを持つベルリンを代表するスタートアップの一社。


Research Gate

研究者向けのソーシャルネットワーク。研究者向けサービスではGoogle等と競合する。創業者はシリア系ドイツ人のIjad Madisch。ハーバードメディカルスクールで学んだ後ボストンに設立後ベルリンに拠点を移動。

ベルリンではAdlershofやMaxplanck Institute等を中心にアカデミックと企業の産学連携が盛んに行われている。170,000人の大学関係者中、博士号所持者が12,000人、R&D関連職種は30,000人に登り先端研究が盛んな側面を持つ。一方で研究成果等を特定の人に共有したり国を超えた学者同士のコミュニケーションを促す仕組みは少なかったことが設立経緯といわれる。また企業がR&D関係者をリクルートするときに使う採用サービスとしても機能しており、採用関連の広告等が主な収入源となっている。

2010年に1st Roundでシリコンバレー系VCのBenchmarkから出資を受け、ベルリンに戻るきっかけとなった。2nd Roundではピーター・ティールのFoundrsFundから追加で出資され、シリーズCでは35MUSDを調達した。投資家の中にビル・ゲイツがいて、ビル・ゲイツに個人投資を受けたベンチャーとして話題になった。 2015年11月に追加投資として52.6MUSDをゴールドマン・サックス、Benchmark Capital、Wellcome Trust(ロンドンベースのNGOバイオメディカルリサーチ基金)とビルゲイツから調達した。


Rocket Internet

ネットワーク企業は欧州のみならず、東南アジア地域やアフリカ大陸等、広い地域に展開されている。ネットワーク企業(出身企業、出資、サポートした企業)には、米国市場もカバーし2017年10月フランクフルト市場に上場し時価総額1700億程度に成長した生鮮食品ミールキット大手のHello Freshや、同じくフランクフルト市場に2017年6月上場し1Billion EUR調達した世界40カ国でフードデリバリーを展開するDelivery Hero, 欧州大陸最大のファッション通販であるZanaodoがある。元マッキンゼーが2012年に設立、ナイジェリアで4000人を雇用し、2016年にアフリカ大陸で初のユニコーン(1B以上のValuation)を達成したJUMIAは2019年にアフリカ大陸初の企業で初めてNYSE上場が見込まれている(2019年3月現在)。

2007年1月にシードラウンドとしてFounderのOliver Samwer自身がシリコンバレー設立したGlobal Founders Capital(European Foundrs Fund)から500K€(約7000万円)を調達後、2009年12月北欧のKinnevik ABより35M€、2013年7月同じくKinnevikABとニューヨークのAccess Industriesより500M$、2014年8月にフィリピンの通信会社PLDTより333M€、同じく2014年8月にドイツのUnited Internet Ventures AGより435M€、2015年2月のIPOで588.8M€調達している 補足:2008年1月にOliver SamwerのGlobal Founders Capitalは米FacebookのシリーズCに15M$を出資している。

東南アジアも強いが、現在はアフリカ大陸の事業にフォーカス。


Blacklane

高級リムジンに特化したUBER的なライドシェア。ボストンコンサルティンググループ(BCG)出身のJens Wohltorf等が創業。Wohltorfはベルリン工科大学、UCバークレー、及びMITで都市交通パターンの研究をする。PhD。

Coupと同じく実験都市としてベルリンが優れている理由とCo Founderの出身地がベルリンであるため。現在は約世界50カ国186都市にサービスを展開している。2013年12月から東京でもサービスを提供中。2011年〜13年にかけてドイツのRI Digital Ventures、B-to-V Partners、88 Investments GmbH、Car4youの出資を受けて2012年6月に正式に運営を始める。2013年12月にリクルートストラテジックパートナーズ(Recruitのシリコンバレー投資部門)から3.3M$をシリーズBとして調達。2016年8月にシリーズCとしてダイムラーから20M$、2018年1月にUAEアブダビの自動車/不動産/ホスピタリティ関連事業を行うAI Fahim GroupよりシリーズDとして40M$を調達。


Ocean Protocol

ポストGAFAM時代のデータエクスチェンジプロトコルを提供するブロックチェーン企業。FounderのBroucePonはトロント出資のアジア系カナダ人でありベルリンに移住後、ダイムラーの国際金融プロジェクトをリードし世界を転々とした後独立、ベルリンベースで過去様々な初期のブロックチェーン企業の設立に関わっている。

例えば2013年に設立されたAscribeはアーティストの芸術作品における著作権、知的財産をブロックチェーン上で管理、販売することを目的とした。ビットコインのブロックチェーン上に開発されたがその環境では大企業の求めるスケーラビリティに対応できないことがわかり、2016年にBIGCHAIN DBを設立した。BigchainDBはオープンソースの分散型データベースRethinkDBをもとにブロックチェーンを利用して開発され、スケール可能な分散型ブロックチェーンデータベースを実現した。

2017年5月にBIGCHAIN DBはトヨタの人工知能AI技術の研究施設であるトヨタリサーチインスティテュートとMITメディアラボとのコラボレーションで自動運転車による分散型データ共有に関する共同研究が発表された。Ocean Protocolはこれらの企業で開発されたデータプロトコルをプラットフォーム化してオープンソースで使えるようにする取り組みであり、Ocean Protocol Foundation Ltd.としてシンガポールに設立され、ベルリンが実質本拠地として活動している。

100カ国、4000人の出資者による資金バックアップ。マネタイズは現状めざしておらず、NPO組織に近いかたちの運営となる。Ocean Protocol上で利用企業がマネタイズできるビジネスを生んでいくことが将来的な目標となっている。企業体としてはOcean Protocol Foundation Ltd.としてシンガポールでNPOとして登記されている。


Auto One

Grouponで働いていたクリスチャン・ベルターマンが創業。AUTO1 GroupはAUTO1.com、wirkaufendeinauto.de、AutoHero Germanyの運営を行っている。AUTO1.comはB2B向けで30カ国・35,000人以上の独立系中古車バイヤーに対して効率的な中古自家用車の販売、購入情報を提供している。

wirkaufendeinauto.deは車買い取りサービス。売り手は無料でオンライン仮査定し、350以上の拠点に持ち込み車を売る。拠点では整備士が20分程度で車両状態を確認し、iPadから情報をアップロードすると10分程度で査定額が出され、売り手は5日程度の期限内に売却するか判断する。ドイツでは中古車を売るまで平均で約90日要していたがAUTO1ではこの仕組みにより10日程度に短縮できているとされる。なお買い取った中古車はディーラーに転売されるまで店舗で保管される。AutoHeroはB2C向けで買い手が高品質の中古自家用車を安く購入できる。3つのサイトで収集したデータはアルゴリズムを用いて管理されている。これは中古車の価格を決定するだけでなく、店舗への車両受け入れ・修理・輸送・販売といった店舗ネットワークにも活用されている。

ソフトバンク・ビジョン・ファンドが出資したことで有名。20%株式を所有。2018年1月4億6000万ユーロ調達(約500億円)ソフトバンクビジョンファンド他、2017年5月サンフランシスコのPrinceville Globalから360M$、2015年4月に117.6M$をDST Global(香港)、Piton Capital(ロンドン)から調達。


COUP

自動車部品で世界的に有名なBOSCH社が100%出資するスタートアップ。同社がCSRとして掲げるSustainable Mobilityの5つのSolutionのひとつ、Ridesharingを具現化するサービスとして2016年8月にベルリンで200台の台湾企業Gogoro社製のスクーターで提供開始された。(現在700台程度と推測)2017年夏にパリで600台、2018年夏にマドリードで850台導入され、合計3500台で運用されている。スクーターの予約と決済はSmartphoneアプリ上で完結する。


GNOSIS

ベルリンをメイン拠点として、予測マーケットプラットフォーム、分散型トレーディングプロトコル、マルチシグを使った仮想通貨ウォレット等を提供するブロックチェーン企業。予測マーケット向けのトークンははあらゆる業界で応用でき、例えば金融、先物取引、災害予測、政治の未来予測(BIRIXIT等)等に応用でき、コミュニティー内の人間がYESTokenかNOTokenを購入することで取引量により集団の集合知を活用して未来を予測する。

本社はジブラルタル法人で(DAOに関するレギュレーションが最も柔軟なため)その他スペインのア・コルーニャとリモートメンバーで形成されている。GNOSISはニューヨークに本拠地をもつイーサリアム財団最大のD-App開発会社であるConsensys発祥の企業。2017年4月にICOを実施し約250,000ETHを調達。(Ethereumが最大値1ETH=1000ドルになったとき250,000,000や約250億円程度の価値)

今回は以上、いかがだっただろうか。

ベルリンの場合政府側がむしろ外国人投資家や起業家が勝手に世界とネットワークを広げ活動しているのを、ベルリン州に税金を落としてもらえるようにドイツ法人を作ってもらう努力や2019年からは暗号通貨の規制緩和でこれまでブロックチェーン企業の主要な登記先だったジブラルタル等からドイツに呼び込んでいるのが現状だ。

なのでベルリン=ドイツという見方をすると実態と大きくギャップを生むことになる。ここが単一巨大ドメスティック市場を最初に狙える米国(英語圏10億)や中国(中国語圏13億)と大きく異るところだ。

極端にわかりやすく言うと、中国のフィンテックは米国製を規制したうえで、13億人の中国人に向けたものだが、ベルリンのフィンテックはドイツ外やドイツの都市に住むドイツに馴染めない外国人とLCCで国境を超えて飛び回るEUと全欧米圏のミレニアル世代に向けたものだ。

なお、ここに上げたのは最新版ではなく、10年以上前のエコシステム黎明期のものを含む。この頃からすでにベルリンはドイツではなかった。

またベルリンには株式による調達をベストとしない自己資金派ブートストラッパーやSTO,IEOの可能性を信じる暗号資産調達派(そもそもICOで過去に資金調達を成功した会社も多い)も多くいてここに上げた企業のやり方が必ずしも目標とされているわけでもない。



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